アートメイクの症例写真をSNSに載せてよい? ビフォーアフターには条件があります
施術者になると、次に必要になるのが実績の見せ方です。ところがアートメイクは医療なので、写真の出し方には決まりがあります。知らずに投稿してしまう前に、線引きを確認しておいてください。
アートメイクの症例写真とSNS|要点
- 医療機関のSNSアカウントによる発信は、医療広告ガイドラインの対象になり得ます。「広告ではない」と思っていても、規制の外にあるとは限りません。
- ビフォーアフター写真(術前術後の写真)は、単体で載せることが禁止されています。治療内容・費用・主なリスクと副作用の説明を併記して初めて認められます。
- 患者さんの体験談を広告に使うことは認められていません。「効果があった」という声を載せる形は避けてください。
- 撮影の同意と、公開の同意は別のものです。両方を、範囲を決めて書面で得てください。
- 「必ず」「絶対」「痛くない」「消えない」といった断定は使えません。個人差がある旨の記載が必要です。
- 自由診療である旨と費用の記載が必要です。
アートメイクのSNS発信はなぜ規制の対象になるのか
アートメイクは医行為であり、それを提供する医療機関の発信は、医療広告として扱われることがあります。「これは広告ではなく、ただの実績紹介です」と考えていても、患者を誘引する意図があり、施術者や医療機関が特定できる内容であれば、規制の対象になり得ます。
ここで押さえておきたいのは、媒体の種類で決まるわけではないということです。 ウェブサイトでも、Instagramでも、判断の枠組みは同じです。
個人アカウントなら自由、とも言い切れません。勤務先の医療機関が特定でき、来院につながる内容であれば、実質的に医療機関の広告と評価される可能性があります。 勤務先がある方は、投稿ルールを勤務先に確認してください。業務委託で働く場合は、症例写真の権利と使用範囲を契約時に決めておくと安全です (業務委託契約で確認する10項目)。
※参考:厚生労働省「医療広告ガイドライン」 / 当サイトが根拠にしている資料は一次情報・関連機関リンク集にまとめています。
アートメイクのビフォーアフター写真に必要な4点
術前術後の写真は、写真だけを載せることが禁止されています。施術の効果に関して誤認させるおそれがあるためです。 ガイドライン上は、次の情報を併記した場合に限って認められる扱いになっています。
| 併記するもの | アートメイクでの具体例 |
|---|---|
| ① 通常必要とされる治療内容 | 眉のパウダー・1回の施術時間・通常2回以上必要であること・使用する麻酔 |
| ② 費用 | 自由診療のため保険適用外である旨と、税込の総額(2回分など回数を明示) |
| ③ 主なリスク・副作用 | 腫れ・赤み・かさぶた・色ムラ・アレルギー・MRI撮影時の注意・簡単には消せないこと |
| ④ 個人差がある旨 | 色の定着・持続期間・仕上がりには個人差があること |
③は特に省略されがちです。アートメイクは「簡単には消せない」ことが前提の施術で、これはリスクの中でも大きなものです。 色の変化や除去の難しさについてはアートメイクの色はなぜ変わる?とアートメイクのリスクと合併症で整理しています。
加工・修正した写真は使わないでください。明るさや角度を変えるだけでも印象は変わります。撮影条件(光・角度・距離)をそろえることが、結果的に自分を守ります。
アートメイクの体験談・口コミは使えない
患者さんの体験談を広告に使うことは認められていません。治療の内容や効果に関する体験談は、個人差が大きく、他の方が同じ結果を得られるとは限らないためです。
| 避けたい書き方 | 考えられる書き方 |
|---|---|
| 「朝のメイクが10分短くなりました!(30代・女性)」 | 施術内容と回数を、事実として説明する |
| 「他院より断然きれいでした」 | 他院との比較優位は書かない |
| 「絶対に落ちません」「一生ものです」 | 「持続期間には個人差があります」 |
| 「痛くありません」 | 「麻酔を使用します。感じ方には個人差があります」 |
| 「効果があります」 | 効果の断定はしない |
これは表現を窮屈にするための決まりではありません。アートメイクは元に戻すことが難しい施術なので、期待だけが大きくなった状態で受けてしまうことを防ぐための枠組みです。
アートメイクの症例写真で患者さんから同意を得る範囲
撮影の同意と、公開の同意は別のものです。「写真を撮らせてください」と「その写真をInstagramに載せます」は、同意する内容が違います。次の項目を決めて、書面で同意を得てください。
- 撮影する部位と範囲(顔全体か、眉のみか)
- 公開する媒体(院内掲示・ウェブサイト・Instagram・症例集 など個別に)
- 公開する期間(いつまでか)
- 加工の有無(目元を隠す、トリミングする など)
- 撤回したいと言われたときの対応(どこまで削除できるか)
- 個人が特定される情報を含めないこと(氏名・年齢・地域を絞りすぎない)
⑤は先に決めておいてください。いったんSNSに載せた画像は、保存・転載されると完全には削除できません。 そのことを同意を得る段階で伝えておくのが誠実だと考えています。
アートメイクの投稿前チェックリスト
投稿ボタンを押す前に、次を確認してください。
- 患者さんから公開の同意を、範囲を決めて書面で得ているか
- ビフォーアフターに治療内容・費用・リスク・個人差の4点を併記したか
- 自由診療(保険適用外)である旨を書いたか
- 体験談を効果の証明として使っていないか
- 「必ず」「絶対」「痛くない」「消える」などの断定を使っていないか
- 他院との比較優位を書いていないか
- 加工・修正をしていないか。撮影条件はそろっているか
- 勤務先の投稿ルールと、業務委託契約の症例写真の条項に反していないか
- 費用を書く場合、税込・回数を明示したか
迷ったときは、投稿しないという判断が最も安全です。実績の見せ方に迷う場合は、勤務先の医師と、 必要に応じて薬機法・医療広告に詳しい専門家に確認してください。
アートメイクの法的な位置づけそのものについてはアートメイクに「資格」は必要?、 働き方については業務委託契約で確認する10項目、独立・開業はできるのかをご覧ください。
※参考:厚生労働省「医療広告ガイドライン」/厚生労働省「美容医療を受ける前に」 / 当サイトが根拠にしている資料は一次情報・関連機関リンク集にまとめています。
この記事は一般的な考え方の整理であり、個別の投稿についての法的助言ではありません。判断に迷う場合は、勤務先および専門家にご確認ください。
よくある質問
- アートメイクの症例写真はSNSに載せてよいですか?
- 条件を満たせば載せられます。術前術後の写真は、それだけを載せることが禁止されています。治療内容・費用・主なリスクと副作用の説明を併記する必要があります。加えて、患者さんから公開の同意を得ていることが前提です。
- アートメイクのビフォーアフター写真は禁止ですか?
- 写真そのものが禁止なのではなく、説明のない掲載が禁止されています。医療広告ガイドラインでは、術前術後の写真は「誤認させるおそれがある」として、通常必要とされる治療内容・費用・主なリスクや副作用等の情報を付記した場合に限り認められる扱いになっています。
- アートメイクの患者さんの口コミをSNSに載せてもいいですか?
- 体験談を広告として使うことは認められていません。個人が受けた治療の感想は個人差が大きく、他の方に同じ結果が出るとは限らないためです。「◯◯さんの声」という形での掲載は避けてください。
- アートメイクの症例写真に患者さんの同意は必要ですか?
- 必要です。しかも撮影の同意と公開の同意は別のものです。どの媒体に、どの範囲で、いつまで使うのかを決めて、書面で同意を得てください。撤回したいと言われたときの取り扱いも、あらかじめ決めておくことをおすすめします。
- アートメイクの投稿に「痛くない」と書いてもいいですか?
- 避けてください。痛みの感じ方には個人差があり、断定的な表現は誤認を招きます。「麻酔を使用します」「感じ方には個人差があります」のように、事実と個人差をセットで書く形が安全です。
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