海外のアートメイクはどうなっている? 「誰が施術できるか」が国によって違います
海外のアーティストの動画を見て「日本もこうなのか」と思うと、前提を取り違えます。技術の話に見えて、実は制度の話だからです。何がどう違うのかを、確認できた範囲で書きます。
海外のアートメイク事情|要点
- 日本ではアートメイクは医行為です。施術できるのは医師と、医師の指示を受けた看護師だけです。
- 米国では医療資格を求めていない州があります。テキサス州もカリフォルニア州も、タトゥーと同じ公衆衛生の枠組みで扱っています。
- 韓国は日本と同じ「医師のみ」でした。1992年の最高裁判決以来です。
- その韓国が制度を変えました。2024年に判例が変わり、2025年9月に国家資格制の法律が可決。施行は公布から2年後です。
- 海外の資格で日本の施術はできません。必要なのは日本の医師・看護師免許です。
- 逆に日本の看護師免許も海外では通用しません。渡航先の制度で別に確認が要ります。
- 海外ブランドを掲げる校はあります。32校のうちSoftap・PhiBrows・Biotouchなどの名前が出ていました。技術の系統であって、資格ではありません。
海外のアートメイクは日本と規制の枠組みが違う
結論から書きます。違うのは技術ではなく、制度です。「誰が施術してよいか」「どこで施術してよいか」の決め方が国ごとに違います。
| 国・州 | 施術できる人 | 規制の枠組み | 補足 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 医師、または医師の指示を受けた看護師(准看護師を含む) | 医師法第17条にいう医行為 | 厚生労働省が令和5年に改めて通知。制度は変わっていません |
| 米国(テキサス州) | 医療資格は不要。事業者が州に届け出て営業 | タトゥーと同じ扱い。州保健当局(DSHS)の環境衛生部門が所管 | 「permanent cosmetics」がタトゥー事業のライセンス対象と明記されています |
| 米国(カリフォルニア州) | 医療資格は不要。ボディアート施術者として郡に登録 | ボディアートとして公衆衛生の枠組みで規制 | 州の理美容委員会は「マイクロブレーディングは所管外」と公表しています |
| 韓国 | 移行中。これまでは医師のみ。今後は国家試験に合格した施術者 | 1992年の最高裁判決で医療行為とされ、2024年に判例変更 | 2025年9月25日に「タトゥイスト法」可決。<b>公布から2年後に施行</b>予定で、まだ施行前です |
この表を「海外はゆるい」と読まないでください。米国も韓国も規制はあります。ただし置き場所が違うだけです。 日本は医療の枠に、米国は公衆衛生(ボディアート)の枠に置いています。
枠が違えば、求められる資格も、衛生基準も、事故が起きたときの扱いも変わります。技術の優劣の話ではありません。
海外(米国)ではアートメイクを公衆衛生として扱う
米国では、州ごとに規制が定められています。2つの州を確認しました。
- テキサス州 —— 州保健当局(DSHS)の環境衛生部門が所管し、針で皮膚に色素を入れる事業にライセンスを求めています。 対象に「permanent cosmetics(永久化粧)」が明記されており、従来のタトゥーと同じ区分です
- カリフォルニア州 —— 州の理美容委員会(Board of Barbering and Cosmetology)は「マイクロブレーディングは所管外」と公表しています。 実際の規制はボディアートとして公衆衛生の枠組みで行われ、 施術者は郡の環境衛生に登録します
いずれも「医師である」ことを条件にしていません。日本の看護師にとって重要なのはここです。海外のアーティストが医療者とは限らないため、そのまま日本の働き方の参考にはなりません。
なお米国の連邦当局(FDA)は、色素そのものについては情報を出しているものの、施術行為の規制は地方の管轄としています。「アメリカでは」と一括りにできないのはそのためです。
海外でも韓国は日本と同じ「医師のみ」だった
韓国は、日本の看護師にとって最も参考になる例です。出発点が日本と同じだったからです。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 1992年 | 最高裁がタトゥーを医療行為と判断。医療法により医師のみが行えるとされる |
| 2024年 | 最高裁が判例を変更。非医療者による施術は違法な医療行為に当たらないとした |
| 2025年9月25日 | 国会が「タトゥイスト法」を可決。タトゥーと半永久メイクをまとめて定義し、国家試験の合格者に施術を認める |
| 施行はこれから | 公布から2年後に施行。さらに既存施術者向けの移行期間が2年置かれます |
ここで2つ、押さえておくべき点があります。
- 半永久メイク(アートメイクに相当)が、タトゥーと同じ法律で扱われています。日本ではアートメイクとタトゥーは別の扱いですが、 韓国の新法はまとめて「タトゥー行為」としています
- 除去は引き続き医療者に限られます。入れることは国家資格者に開かれても、消すことは医療の側に残されました(除去と修正の記事)
日本の制度が変わったわけではありません。日本では引き続き、アートメイクは医師法第17条にいう医行為です。 厚生労働省は令和5年に改めてその旨を通知しています。「韓国が変わったから日本も」ということはありません。
海外の資格で日本のアートメイクはできない
日本で施術するために必要なのは、次の3つです。
- 免許 —— 医師免許、または看護師免許(准看護師を含む)
- 場所 —— 医療機関として届出のある施設
- 指示 —— 看護師が行う場合は医師の指示
海外の資格は、このどれにも代わりません。国家資格であっても民間資格であっても同じです (「資格」は必要?/無資格サロンで働かないために)。
逆方向も同じです。日本の看護師免許は、海外でそのまま通用するものではありません。渡航先の制度で別に確認が要ります。 しかも上で見たとおり医療資格を求めていない国もあるため、 必要になるのが別の登録や試験ということもあります。
海外ブランドを掲げるアートメイクスクールをどう見るか
2026年8月14日時点で、32校の公式サイトには海外由来の名称が出ていました。Softap(米国)、PhiBrows、Biotouch などです。 「国際ライセンス」「ハワイ本校」「グランドマスター」といった表記もありました。
これらは技術の系統や団体のネットワークを示すものです。日本で施術できる根拠にはなりません。アートメイクについて公的な国際資格制度は確認できていません(認定資格・協会の違いで詳しく扱っています)。
ただし「無意味」という意味でもありません。その系統の技術体系を学べること自体には価値があります。資格として期待するのか、技術として選ぶのかを分けて考えてください。
説明会で聞くなら、この3つです。
- その名称は何を意味しますか。技術の系統ですか、団体の会員資格ですか
- 更新料・年会費はかかりますか
- それがないと、卒業後の紹介を受けられませんか
海外のアートメイク情報を見るときの注意
海外の症例や手技の動画は、勉強になります。ただし前提が違うので、そのまま持ち込めない部分があります。
| 見えているもの | 日本に持ち込むときの前提 |
|---|---|
| 施術している人 | 医療者とは限りません。日本では医師・看護師に限られます |
| 施術している場所 | サロンのことがあります。日本は医療機関のみです |
| 使っている色素・器材 | 各国の規制が異なります。日本で同じものが使えるとは限りません |
| 「◯回で完成」などの表現 | 広告規制が違います。日本には医療広告ガイドラインがあります |
| ビフォーアフターの見せ方 | 日本では条件を満たさない症例写真の掲載は認められません(症例写真の記事) |
技術は参考にできます。制度は参考にできません。ここを分けて見るのが、いちばん実用的な向き合い方だと考えています。
国内の制度は無資格サロンで働かないために、 資格の整理は認定資格・協会の違い、 タトゥーとの違いはアートメイクとタトゥーの違い、 校の絞り込みはおすすめの整理をご覧ください。
制度の違いは色素にも及んでいます。EUは製品(色素)を規制し、日本は行為を規制しています。 詳しくは色素に規制はあるのかをご覧ください。
※参考(いずれも2026年8月22日閲覧):厚生労働省「医師免許を有しない者によるいわゆるアートメイクの取扱いについて」(令和5年7月3日)/Texas DSHS「Licensing Requirements - Tattoo and Body Piercing Studios」/California Board of Barbering and Cosmetology「Industry Bulletin – Microblading (Cosmetic Tattooing)」/New York State Department of Health「Body Art」/U.S. FDA「Tattoos & Permanent Makeup: Fact Sheet」/The Korea Herald「S. Korea legalizes tattooing by nonmedical professionals after 33 years」 / 当サイトが根拠にしている資料は一次情報・関連機関リンク集にまとめています。
よくある質問
- 海外のアートメイクは誰が施術していますか?
- 国によって違います。米国では州の保健当局がタトゥーと同じ枠組みで規制しており、テキサス州は事業者に州の届出を求め、カリフォルニア州はボディアート施術者として郡への登録を求めています。いずれも医療資格を条件にしていません。一方、日本は医師法第17条にいう医行為で、医師と医師の指示を受けた看護師に限られます。
- 韓国のアートメイクは日本と同じですか?
- これまでは同じでしたが、変わりつつあります。韓国では1992年の最高裁判決以降、タトゥーは医療行為とされ医師のみが行えるとされてきました。2024年に最高裁が判例を変更し、2025年9月25日に「タトゥイスト法」が可決されました。タトゥーと半永久メイクをまとめて扱い、国家試験に合格した人が施術できる制度です。公布から2年後の施行で、まだ施行前です。なお除去は引き続き医療者に限られます。
- 海外でアートメイクの資格を取れば日本で施術できますか?
- できません。日本で必要なのは医師免許または看護師免許と、医療機関として届出のある施設と、医師の指示の3つです。海外の民間資格や国家資格は、このどれにも代わりません(認定資格・協会の違い/「資格」は必要?)。
- 日本の看護師免許は海外でアートメイクをするときに使えますか?
- そのままでは通用しません。医療者資格は各国の制度で定められています。渡航先の要件をその国の制度で確認してください。また前の質問のとおり、そもそも医療資格を必要としない国もあるため、必要なのは別の登録や試験ということもあります。
- 海外ブランドのアートメイクスクールは日本のものより良いですか?
- 良し悪しの問題ではなく、別の話です。2026年8月14日時点で、当サイトが調べた32校のなかにもSoftap・PhiBrows・Biotouchといった海外由来の名称や「国際ライセンス」の記載がありました。これらは技術の系統や団体のネットワークを示すもので、日本で施術できる根拠にはなりません。選ぶときは名称ではなく実習量・費用・卒業後の導線で比べてください(目的別の整理)。
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本記事は2026-08-22時点の公開情報にもとづきます。掲載内容の正確性・最新性を保証するものではありません。 受講・応募の判断は必ず各スクール・各医療機関の公式情報をご確認ください。 本サイトは技術の習得・就職・収入を保証するものではなく、成果には個人差があります。 アートメイクは医師法第17条にいう医行為であり、施術は医師または医師の指示を受けた看護師のみが行えます。 当サイトはアフィリエイト広告を利用しています(掲載基準)。